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「長い話」

長い話。


6月3日の人見記念講堂にて。
自主制作の2曲入りシングルCDを販売させて頂きます。いわゆる流通はその他ネット販売と配信になります。


ここに至るまで長い話があって、だけどSNSとかだと端的に語らねばならないし、長い話は望まれていないんだと思う。
でももし、許されるならこのだだ流しの話を聞いて欲しい。


今回発売するシングルは「雨とぱんつ」「暗雲俄かに立ち込めり」の2曲。
いわゆるプロデュースというものを自分でやらせて貰いました。時間も予算も限られた中、あーでもないこーでもないと一緒に曲をアレンジしていってくれたのが塚田。そして参加してくれたミュージシャンの皆さん。


デビュー前。遥か昔。
塚田という男と私はいつもデモを作ったりライブをしたりしていた。
塚田とは神泉の交差点の近くにあったBalzacという小さなバーというのかな?店で出会った。かれこれ20年くらい前。
ずいぶん大人になってしまったと思う。
ビックリだな。
あの頃いつも私達は焚き火クラブなる活動をしていて、塚田も自然とそれに加わった。
この間峯田君を金田一耕助にして「骨」という曲のミュージッククリップを撮らせてもらったわけだけれど、あの時一緒にずっと編集してくれたのはそのメンバーの1人。
原田遊人。
ちゃんと映画の編集を生業にしているよ。
みんな大人になったな。
あの頃埋めたタイムカプセル。
この間無事発掘されたんだよね。


話を戻します。
私は前にもちょっとお知らせしたと思うけれど、少しのお休みをしていて、簡単にいうとレコード会社を離れている。去年の「頂き物」を最後に離れたんだ。デビューからずっと二人三脚でやってきたアンディの元を離れる勇気というのはとんでもないものだったけれど、その時私はシンガーソングライターを語るには空っぽになり過ぎていたんだと思う。
いわゆる契約更新の時期が来て、もう無理だと告げるしかなかった。
私小説を描けない私小説家なんてやっぱりおかしいでしょう?


それでも私は恵まれていて、ちゃんと活動感というものをスタッフが作ってくれて、細かなイベントやライブを設けてくれて、こんな話しなければ休業していたというのもよく分からないと思う。
でもやっぱり私は今、どこかに属しているわけではないのです。風来坊なのです。


こわいなってずっと思ってた。
今もだけど。
立ち止まるのが怖いなって。
現にこうやって独り立ち止まれば、仲間はみんなそれぞれの道を歩いていくじゃない。だから答えを見出せないまま目をつぶって、耳を塞いで、出来るだけ早足で通過していこうとしていたんだ。
でも足掻いても空洞人間からはやっぱり世界は生まれないです。
無理にでも足を止めて、周りの景色を眺めてみなくちゃいけなかった。


そしてね。
ひと時も寛ぐことのないまま時間は過ぎて、私はなんも変わらなかったけれど、やっぱり作ってみなくちゃと決めたのです。
私作るの好きなんですよ。
表現だとかアートだとか、よく分からない。興味もたぶんない。
ただ作るくらいしか自分を見出せないんです。
人と心底腹割って話すなんてしないし、会話では繋がれない。したいともやっぱり思わないです。
結局ね、作り物を誰かが好きだといってくれる瞬間だけが意義なんだ。


今回のCDは大きな傘の下作られたものではありません。今までと変わらぬクオリティとは言い切れないけれど、誰かと物を作っていくという感覚を再び感じさせてくれた。
それはとてもワクワクする行為で、明日という日の訪れを予感させるものでした。
夜明け前だと今は信じてみたいのです。


初めてのプロデュース作品。
販売される場所はとても限られているけれど、手に取ってくれたら嬉しいです。


安藤裕子